保険業界が国家に変わる?

読みたい本を読む」より「21世紀の歴史 未来の人類から見た世界」

今回は、サルコジ仏大統領によって発足した「アタリ政策委員会」の委員長に任命されたフランス人のジャック・アタリ氏著作「21世紀の歴史 未来の人類から見た世界」を読んだ感想を少し。とてもおもしろい展望が書かれていたので。


※前提として、この本は2008年8月30日に出版されている。(原著はいつかな)

まず結論は、
保険業界」と「娯楽産業」が今後は勢力を大きくする、と書かれていました。
「娯楽産業」に関しては話にまとまりがなくなるのでスルーします。


なぜ、保険業界なのか。

その最も大きな要因は、政府の弱体化です。
ほかの国はどういう状態か分かりませんが、日本に関しては弱まっていると思います。
国民は政治に関心を払わず、政治のリーダーはコロコロと変わる。政府の財源は乏しくそれを賄う方策はいまだに打ち出せていません。
311の大震災の例に出せば、分かりやすいと思います。
国家(政治)は、被災した国民の生活を完全には保障できません。
お金がないからです。財源不足っていうやつです。

そこで可能性としてあるのは、政府機関の民営化。
政府が担うべき機関を民間企業に任せる。そうすれば、政府が負担すべき財源は抑えることが出来ます。具体的には、今回の震災で「復興支援型ファンド」という新しいモデルが誕生しました。政府の義援金配当は一人当たりいくら、というようにアバウトな配当しか出来ません。しかし、この「復興支援型ファンド」は会社や商店それぞれが必要な額だけ義援金を与えることが出来ます。民間の場合は、小回りが利くのです。
「セキュリテ被災地応援ファンド(http://oen.securite.jp/)」が、その一例です。
これは社会保障・生活保障を民間が行ったという具体的な例です。
このようにして、他の部署も徐々に民営化していくのではないでしょうか。

社会保障・生活保障は民間が行う。
そこで、注目されるのが「保険会社」です。
国家が保障できないところを、「保険」でカバーします。
「年金」も同じです。今後、高齢者数が増えると満足に年金が支払われるか分かりません。
それだったら「保険会社」に投資した方がリターンは大きくなるでしょう。多くの人が政府の年金制度よりも保険会社の保障の方が確実だと思えば、保険会社には資金が集まってよりその確実性は増していきます。個人に限らず、企業も企業で金融リスクを避けるために保険会社を利用するだろうと、アタリ氏も言っていました。
お金は保険会社にどんどん集まって、その規模を拡大していくことになります。
つまり、国家が財源不足や決断力のなさから衰退していき、その一方で国家が保障しきれない部分を保険会社が保障します。保険会社が国民を守るのです。

その結果、「保険」の重要性が増して生活のリスクを最小限に抑えるべく「超監視体制」と「自己監視体制」の時代が来ると、アタリ氏は述べているのですが、今回はここまでで。


「21世紀の歴史 未来の人類から見た世界」の前半は、人々がまだ言葉を持たない時代から現代までの歴史を振り返るので多少退屈かもしれませんが、中盤あたりからの怒涛の未来予想は一読の価値があると思います。ぜひ、読んでみてください。